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歴史随筆(10)      打田 昇三  (2009.2.1)

 

信濃路から   2009.2.1

 「関東甲信越」でも東の茨城からは西の信州などが遠くに思えるが、歴史的には意外な繋がりがあって南木曽に接する苗木( えぎ)主の八代目は府中(石岡)藩主の子だし、佐竹以後の初代水戸城主・武田信吉の祖母(見性院)が、徳川時代屈指の名君となる保科正之(家光の庶弟)を高遠(たかとお)藩に預けていた。

 石岡に隠棲していた鈴木三樹三郎は、西郷隆盛の命令で赤報隊(せきほうたい)の幹部だったため明治顕官への道を失った。

赤報隊のことは島崎藤村の「夜明け前」に詳述されている。その藤村の詩集や久米正雄・北杜夫らの作品が「信州の名著復刊シリーズ(全25巻)」として長野県図書館協会から出版されることになった。

 シリーズ第四期収録作品に一ノ瀬綾「黄の花(田村俊子賞受賞作)」が有るのだが、一ノ瀬さんは柿岡に十数年も住み、今は郷里に移られ水戸の同人誌に参加されている。

 山地の多い長野は風光明でも自然が厳しいようで「温暖で自然豊かな八郷」を今でも誉めてくれる。

石岡に住む者は信濃から言われる前に、恵まれた地元の風土自然や歴史文学を大切にすべきなのでは……。

復刊シリーズの冒頭には「図書館が推薦する」とある。